8月梗概その2

ポポイの触覚 よよい

登場人物は二人なのに、何度も読み返すのは、やはりわたしは次第にいろいろな処理能力が圧倒的に無くなってきているのかもと不安を覚えました。いろいろわからないわからないと前回は言ってすいません。わからない方がおかしい、くらいに思ってください。

そして、ここでも、混乱したのは「ププイはポポイがププイの長く白い体毛を弄んで遊んだ同年代の集団から助け出したことがある。」で、普通は、“ププイはポポイから助けられたことがあるのを忘れなかった。”という流れだと思うのだけど、この文章は、主語がププイだから、違うのだろうか。やはり、ポポイがププイを助けたのだろうか、いやいや、ププイがポポイを助けて、昔も今も自分のことを重ねている?そして、最後の「ポポイはププイのため、ププイはポポイのために、お揃いの触覚をつけて共同体の中で生きていく。」は、緑の触覚なのだろうか。それはどうでもいいことなのだろうか。とか、またわからなかったのですが、いじめと物語みたいなところかもしれませんね。50枚だと、登場人物はこういう二人だけの物語で十分な気もします。わたしも、こういう二音重ねの名前で二人だけの関係性の物語を作ってみたいと思いました。でもラストは「義」というより、愛とか情のように感じました。

 

贄とオロチと :式

「不死のため蘇るカザシを「食い切る」ことはできない。そのためタツミは永遠にカザシしか食べられぬ体となった。千年もの間贄を食らわなかったタツミは贄を食らい続ける必要があるため、カザシに同行することにしたのだ」というような関係性は読んだこともなく、とても面白いと思いました。でも。タツミは、カザシに「同行」する。というのは、ここで既にどこかへ移動しているのだろうか。でも、他のオロチにも食べられているというのは、洞窟と洞窟を移動して、他のオロチに食べられている間も近くまででかけた、ということだろうか。あと、「タツミの体はカザシを受け付けなくなった。」で、あれとたちどまってしまう。「カザシはタツミの体を受け付けなくなった」と書かれていないと、頭に入らなくなる。もうわたしの日本語が不自由になっているのかもしれません。最後の「蘇ったカザシが見たものはナギ一人だけ。タツミの姿はどこにも見えない。」は、上手くていいのだけど、だけどそれなら。と思っていて「ヒーローは「人間の敵であるオロチを殺す」ナギです。」とあって、ああ、そうだよね。そうだけど。と思っていて「「百合SF」を書きたかっただけというのが本音です。」は、確かに。とおもいました。

 

Ground Island 岩森応

これは、最初に読んだときよくわかって、前半に書かれている、わからない行動が「GI」の導きで奇跡をもたらす仕組みがとても、面白いと思った。だけど、本日読んでみると、逆にわからなくなってきてる。ああ、もうわからないところなんか、あげられない。あまり、GIというゲームについて考えずに最後まで読めて、面白を感じられたのだと思います。なので、リアルにGIの説明をしなくても、あるいは、GIが何なのか、全くわからなくても、あの奇跡があったから。という構造は温かい、いい話だと思います。

 

白銀のクリアテキスト:大塚次郎

大塚次郎さんのいくつかの表現には、はっとさせられて、好きです。「ほぼ全裸のクリアテキストに近い生活は、苦しいながらも充実したものであった」とか「その態度を、仲間は「情」と呼び納得してくれた。」とかね。それと、「人間から見た熊や狼のような猛獣的情報生命体が、餌となる情報生命体を求めてやってくることだ。」は、なんでもなく、もうそういうものなのだ。ということで頷ければ、納得できるのですが。「私の与えた暗号化技術の影響だろう。転生したかつての「幽霊」たちもいるのだった。そして今日も、私は幽霊と猛獣情報生命体との戦いを陰から助けるのであった。」は、あれ、救援を呼ぶプランはどうなっているのだろう。まだ地球にいて、この猛獣生命体の戦いを助け続けているという解釈でいいのか、何か、読み取れていないのかも。と不安になります。

 

ムタビリスの庭:一色光岸

たぶん、冒頭の風景描写は、梗概にはなくてもいい部分なのかもしれませんね。庭から出て行った二人と、彼らを見送った芙蓉だと思ったのですが、最後の「正午0時。爆発音と共に液体金属が壁を貫き、壁の一部が抉られる。初めて見た外の世界はただただ荒涼としていて、それがどこまでも広がっている。」は、結局、庭を出られたのですよね。この壁というのは、脱出する乗り物?ではなくて、やはり建物の壁ですよね。すぐ、初めて見たそとの世界というのは、もう庭の外が「即」はじめてみた世界ということなのだろうか?でもアピールには、「最終的には未来の人類の希望」とあるので、ここから何かの活躍があって。そこらへんを「※突然の訃報でラスト2日が消滅…」ということなのでしょうか?

 

ゲームマスタ:武見倉森

よく読めてわかりました。でも、ゲームマスターになる。ということがどういうことなのか。もっと象徴的な意味がわかるようになっていれば、内側に入っていくとか、最後の玉座の争いで、自分がゲームマスターになるという

意味が重層的になるのかもと思ったりしました。あ、でもアピール文には書かれていました。

 

繭玉のたゆたい:比佐国あおい

和風のイメージと、人ならざるものたちの描写はよかったのですが、やはり最後に「満身創痍のオミとテナは自分たちがもう長くないことを悟り、生きた証を遺す。体を重ね合うと赤子が生まれる。かげは蝶でも鵺でもない、全く新しい「繭玉」が。」の繭玉って何だろう。それより、この体を重ね合うと赤子が生まれる。は瞬時に生まれたのか。でも、それで、子供作って終わりって、なにかムラムラしませんか?アピール文にも苦し紛れの。とあるので、作者もこれでいいか迷ったという点でしょうか。人型のヘロヘロになったヒーローとヒロインが体重ねて子供産んで終わりというのは、完全な続編の布石ですからね。ああ、ありか。

 

遺された角:村木言

また、恥ずかしながらわからないところがあります。「エーネがふと後ろを振り向くとマウリの姿はなかった。」で改行があって「そこには代わりに体長約四十センチの一本角を生やした人型生物、一角様が立っていた」という描写だと、マウリが一角様になった。と思ってしまうのは、やはり読み方の間違いでしょうか。でも、ずっとふたりで歩いていて、急にいなくなって、いなくなった理由も語られずに、最後に「後、数日迷い続けたマウリは」となるところに、えっ。となってしまうのも、読み違いなのか。って次第に自分が読み取れないことに恐がり始めています。ちなみに、この一角様は、ゴールデンゴールドに出てくる仏さんをイメージさせていただきました。冒頭の一文から、最後まで抑制された文体とイメージの描写は、本当に達者で羨ましいです。

 

プロフェッサー楓とアレクサンドロスの末裔:渡邉 清文

渡邉さんが使う体言止めの流れるような文章がいいですよね。論文なんかは後回しだ!が、最後に生きているし。細かなヒロインの設定もいいし、悪役だった少年も「根が聡明な少年は素直に理解し」と簡単に物語を進行させるのもいいですよね。と、渡邉 清文も早く選ばれてください。これがどうかは、全くわかりませんけど。

 

ヒーローの見えざる手:木玉文亀

また自分が理解しているかどうかが不安になるのですが、

「それでも自然災害はIHが登場する以前の頻度へと戻ったままで、地球改変は消滅。」というのは、改変が消滅。だから元通りの普通な状態になって、「我々は「神」を失ったと人々は嘆いた」ですよね。でも、それはつまり、見えざる手があると思ったら、それすら存在しない。「成層圏が傘のように覆われている」のも、特に特殊な状況ではなかったということでしょうか。何もなかったというのもありかもしれないけど、あー。「反面教師的な態度」なのですね。

 

オール・ワールド・イズ・ア・ヒーロー:黒田渚

最初の設定が面白く、ひきこまれました。まさしく、この物語自体も「ラストがハッピーエンドにならないストーリー」として集結していくのかなと思いつつも、「テビスは視聴者のすべてがAIに代わってしまったことを悟る」。ああ、そこまでは思えませんでした。「ヒーロー」というお題で、ああ、熱くならないのもありのなか。と唸りました。

 

選択子ノ宮:九きゅあ

前半は面白く読めました。でも終盤で台詞として「トロッコ問題は」って、この世界で唐突に喋らせるところに違和感を強く感じました。もちろんヒーローを描く主題で「トロッコ問題」を扱うのは、何も問題がないのですが、仮想現実で、「本当のあなたはトロッコ問題の判断を下すために創られた存在」はどうなんだろう。いや、実作があるなら読ませていただきます。

 

ロータス・ブレイヴ:宇露 倫

書かれていることはよくわかりました。ただ、逆に、つっかかりがなくて読めて変だなと。もうここまでくると逆に、「つっかからない物語」に違和感を覚えてしまいました。って、へんないいがかりのようで、申し訳ありません。きちんとしたヒーローなのですが、SFとしてのヒーローってこれでいいのか。というところが、わからなくなってしまいました。

 

ペテン師モランと兎の星:藍銅ツバメ

異世界の描写は、状況描写だけでなく、名前や職名がはまると、それもまた、その世界を描くことになるのだなとわかりました。それにしても、いろいろ適格にはまった描写と物語だと思いました。

 

ディスオリエント・エクスプレス:中野 伶理

実は、この梗概を紹介したくて、twitterのツイートだけでは、書ききれないだろうからということから、いっそ全員梗概感想となったような気がします。

最初は何だかわからない電車の描写が、ディックの地図に無い街ふうな、存在しない駅の物語かなと思っていたら、「乗客は一人で、思い入れのある品物の説明をし、気づけば明け方になり、二人はベンチに座っていた」も、あまりイメージがつかみ難い描写なのだけど、これが繰り返され、「秘密の隠し場所を捜すと、品はそのまま残っていた」も、何をしているのだろう。と思いながら、たぶん鈍いわたしは、最後の一行で、ああそういうことでしたか、と思ったのでした。悪く言うと、昔あったかもしれない掌編小説のようだけど、今回のヒーローとか正義とかいうお題を一番強く訴求している梗概だと思いました。

 

スタンド・アップ:西宮四光

最後の段にある、「ジェイはおれの隣で悲鳴を上げていたじゃないか」というのが、わからなかったのですが、最初に「帰りの電車から降りると悲鳴が聞こえた」が、もしかしたら、ジェイのことだったのでしょうか。でもないのか、そんなことと関係なく、「おれはジェイに向き合わなければならない、ここに集まってくれた奴らとも。そして何よりも自分と」と、あまりにも急に姿勢を変えたランパルトのように思いました。

 

赤いお父さん:泉遼平

わたしはこういう現実でヒーローを演じている物語が結構ダブるかなと思っていたのが、少なくて意外でした。

そして、内容アピールに書かれた作者の文が格好良かった。そうそう。ぜひ、「自分の作品がSFかどうか、はもう気にしないことにしました。目新しさもないかもしれませんが、地に足ついたもんを書き続けて、最後までこのスタイルで戦い抜きます」それは、全く正しいと思います。ぜひ、一緒にこのまま戦ってください。

 

生きている方が先:安斉樹

わたしもnetで、竈三柱大神やかまど神について、調べてしまいました。いや、知らないことって多い。もうね、ここでも、泉遼平さんと同じような感想もちました。

 

パノプティコンの中心にいる僕:藤田青土

たぶん、藤田さんでないと正確にはわからない、最初のA階からE階の人とそこから各階のヒーローショウの対比の微妙さが、かなり面白かったです。パノプティコンというっ言葉も始めて知りました。刑務所の施設だったのですね。画像としてとてもインパクトがあります。ありがとうございます。